三題噺/お題:『レンガ』『50』『毛玉』

羞恥と怒りのレイヤー

坂口もぐら


「ただいま〜」
「おかえり、お兄ちゃん」

ダイニングキッチンで夕飯の仕度をしていた咲耶(さくや)に
兄・透流が疲れた声で帰宅を告げた。
彼は量販店の紙袋をテーブルに置き、どっかりと椅子に腰を降ろした。

 ゴトンッ

と、まるで石のブロックかレンガのような量感のある音がした。

「なに?またアニメのDVDなの?」
「おーっ、『魔法戦姫パルテクター』のコンプリートボックスだ」

透流は紙袋から話題のブツを取り出すと、やや呆れ顔の妹に見せた。
DVDの入れ物としてはどう見ても大きすぎるパッケージだ。
きっと人形か何か特大なオマケが付いているのだろう。
その大きな箱の表には羽根のついた白いコスチュームの美少女が、
毛玉のようなマスコットキャラと戯れていた。

「コレは凄いぞー、50話で打ち切られてしまったため幻となった
 最終2話を新作して追加したというスペシャルな代物だっ」
「あれ、この服この前着せられたコスチュームと少し違う」
「うむ、これは最終回にだけ出てくるファイナルモードのバトルスーツなのだ。
 そのうち、ちゃんとコスチューム作ってやるからな」
「い・ら・な・いっ!」

心底嫌そうな顔で兄の言葉を拒絶する。
と、そのときある疑問が頭をよぎった。以前から思っていたことだ。

「お兄ちゃんって、あまりバイトととかしてるように見えないけど、
 こういう物買うお金って、どっから出てくるの?」
「え、あ、いや、あれだよ。
 知魅(ともみ)ちゃんと作ってる同人誌とかCDとか」
「ふ〜ん」

唐突の質問に、答えを用意していなかった透流は慌てた。
その態度から鈍いとよく言われる咲耶も何か隠しているなぁと気が付いた。

「・・・・それだけ?」
「あとお前が着たコスプレ衣装を売ったりとかだな・・・」
「えっ、コスプレの古着なんかお金になるの?」

しかし、そのコスプレの衣装を作るにも結構なお金が掛かっている。
着古しなど売っても元手以下だろうから、採算が合わないハズだ。が、

「おお、お前のコスプレ写真をつけてネットオークションに出すと、
 これがなかなか高値を ―― 」

思わず調子に乗って余計なことまで暴露してしまい、
透流は自分の口を押さえたが時すでに遅すぎた。

「・・・えええええぇぇぇぇぇぇっっ!!」

自分の身に付けたものが他人の、それもおそらくその筋の男性の所有物になる!
その後それがどう扱われるかなど、咲耶には想像できない。
できないが、できないだけに感じる悪寒と羞恥はより大きく強いものだった。
咲耶の顔が青ざめてから、こんどは真っ赤に染まった。

「コ、コ、コ、コスプレなんかだいっ嫌いよぉっ!!」

それからしばらく透流のHPの更新は長いこと滞ることとなったのだった。

おしまい。


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